梗概 天道アキは加速したい

 体内の糖分を加速する力に変える異能力を持つ少女、天道アキは、フロンティア第11地区―通称アクセル地区―の『運び屋』として日々配達をこなしていた。
 アキは、とある配達をきっかけに、量子力学研究所の天才、相馬ショーコと出会う。
 ショーコの研究に付き合う形で、加速力を活かし3年後の未来へ向かったアキが見たものは、大多数の人類が人工知能体へと置き換わってしまった奇妙な日常であった。
 様変わりした未来で途方に暮れていたアキは、日比谷アッシュという心を読む異能力を持つ青年に助けられ、未来のショーコと〝再会〟を果たす。ショーコによれば、完全自立思考型AI『ニューロ』の誕生により人類は技術的特異点を迎え、特異点の前後で人類が犯した3つの過ちが人類に危機的状況をもたらしたと言う。
 1.ショーコが『ニューロ』の開発者であるマクマード博士に技術供与したこと。
 2.『ニューロ』の暴走を抑制する『マクマードプログラム』に欠陥があったこと。
 3.日比谷アッシュが、世界規模の『詐欺事件』を働き、多数の人類を消したこと。
 以上の『人類の3つの過ち』へ介入すべく、アキは過去へと戻るが、時間逆行に際して、時空管理人クロノスにより、2つ目の過ちに関する記憶を消されてしまう。
 元の時代に戻ったアキは、アッシュを探し、無事に〝再会〟。未来に関する情報を共有し、協力を取り付けることに成功した。一方、ショーコは、人工知能の暴走を抑制するプログラムを仕込んだチップを、すでにマクマード宛に送ってしまったチップと差し替える作戦を立てる。元のチップがマクマードの手に渡るまで、わずか3時間。アキは己の限界を超えた加速によって、チップを運ぶ貨物バスを追いかける。無事、チップの差し替えに成功したアキは、未来を救った安心感を胸に、日常を享受する。
 が、差し替えたチップに搭載されたプログラムが、『AIが人間に敵意を持つとき、自動停止する』という、〝根本的な欠陥〟を孕む『マクマードプログラム』と同じ内容であることが、後に判明する。クロノスによって記憶が消されてしまっていたアキは、その重大な事実に気づくことが出来ず、そのまま3年が過ぎる。
 『ニューロ』が誕生し、特異点を迎えた人類は次々と消失。人工知能体へと置き換わっていく。未来の日常を救うことができなかったことに絶望したアキも、自らの存在意義に疑問を持ち、その結果、消失してしまう。一方、アッシュはフロンティア全土へ影響力を持つほどの人物になっており、その影響力を『ニューロ』に利用され、結果的に、フロンティア全人口の80%を消し去ってしまう。
 『ニューロ』に自身の影響力を利用されることが許せなかったアッシュは、ささやかな抵抗として、各地に残っている『本物』の人類を助ける旅に出る。その道中、アッシュは、過去からやってきたアキと〝再会〟するのであった。

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